6.アドバイザーのタイプと特徴

6-1. アドバイザーの必要性

オーナー個人で全てを準備したり、同時に複数の買い手候補と交渉することは非常に大きな負荷がかかりますので、M&Aアドバイザーを有効活用することは成功への近道です。
しかし、頼む相手を間違えると、マッチング以外のサービスがほぼなかったり、未熟・ピント外れのサービスを提供されたり、最悪の場合、逆効果(機密情報の競合企業への流出等)もありますので、アドバイザーに支援してもらいたい役割を具体的に検討した上で、必ずアイミツを取ることをお勧めしています。会社を売却したことのある元オーナーに話を聞いたり、各種セミナー等に参加して情報収集されることも大変よいことと思います。

6-2. アドバイザーのタイプ

M&Aアドバイザーは、組織形態、クライアントとの関係、案件規模、業務範囲、報酬形態で分類することができます。ただし、タイプにかかわらず、M&Aアドバイザリー業務は担当者個人の熱意、経験、専門能力、保有ネットワークで結果が変わりますので、担当者個人が自分の会社を担当するのにふさわしいかどうかを必ず事前にチェックしてください。

アドバイザーのタイプ

組織形態としては、以下のように分類できます。

投資銀行 ハイレベルな助言を提供(ただし中堅中小企業の経験は少ない)
独立系FA 投資銀行出身者が独立するケースが多く多様、しがらみのない助言可能
証券会社 株のプロであり上場会社案件や売り手向き、幹事先を重視する傾向
銀行 融資・審査のプロであるため買い手向き、融資取引先を重視する傾向
大手M&A仲介 中小規模の事業承継案件が中心、早期成立を重視する傾向
中小M&A仲介 小規模案件を中心にマッチングサービスを提供
コンサル会社 売却前支援・DD・売却後支援が中心、FAサービスを提供する大手も

クライアントとの関係としては以下のように分類できます。

ファイナンシャル・アドバイザー(FA)
売り手もしくは買い手の片方にのみサービスを提供します。
双方代理の問題がなく、クライアントに有利となる助言を受けやすい望ましい関係です。
売り手FAが買い手有力候補へ提案するのはもちろんですが、
必要に応じて別のFAが(買い手FAとして)他の買い手候補へ提案といった形で探索活動の協業も可能なため、交渉先を広く確保したい場合にもFAが有効です。
M&A仲介
売り手と買い手の双方にサービスを提供する関係
双方代理の問題があり、支援内容が限定的となりやすい点が課題
親密な買い手(お得意先)を明白に優先する可能性がないかを確認しましょう。

FAと仲介の比較イメージ

案件規模(企業価値または株式価値)は以下のように分類できます。

数百万円~ 中小M&A仲介
1億円~ 大手M&A仲介、独立系FA
5億円~ 中堅中小証券や地方銀行、独立系FA
20~30億円~ 大手証券や都市銀行、大手独立系FA
数百億円以上 外資系投資銀行や大手金融機関

業務範囲は以下のように分類することができます。

相手探しと最低限の事務(A) マッチングがメイン
(A)+専門的支援(B) 詳細開示情報作成やバリュエーションが追加
(A)+(B)+事前準備支援(C) 事前準備支援がさらに追加

アドバイザーの業務範囲

報酬形態は以下のように分類することができます。
主に、着手金等の取引成立前の報酬体系でアドバイザー毎に違いがあります。

着手金 調査・分析、資料作成、候補企業探索等に関するコストで、M&Aのプロにしっかりと時間を割いてもらうための最低限のコスト。月払いのリテイナー・フィーという形で分割払いにするケースもあります。
アドバイザーからは売り手の本気度を確認でき、売り手にとってもお金を払ったので主体的に取り組む心の準備になるため、支援内容に応じて最低限の適正額を支払うことをお勧めします。
(タダより高いものはありませんので、着手金無料業者については必要な支援内容が含まれているかをご自身の責任で確認することをお勧めします。)
成功報酬 売却成立時に、取引規模が大きくなるにつれ料率が下がるレーマン方式が主流(5億円までが5%の料率)。
(買い手からも報酬を受領する場合には売り手の味方をしてくれるか不明ですので、FA契約か仲介契約かを確認することをお勧めします。)
その他 M&Aに詳しい弁護士に契約書関連の業務を依頼するためのコスト等

6-3. 金融機関系と独立系の違い

「やはり名前の通った金融機関が安心」
「独立系は小さな会社なので不安」
「違いがわからないから安心な先を選びたい」
を思われる方が多いようです。

金融機関系は、非常に多くの取引先を有しており、
その中からスムーズに買い手候補をリストアップできる点で
安心感を得られるのでしょう。

ただし、売り手オーナーにとって大事なのは、
「自分に有利なM&Aのサポートをしてくれるかどうか」だと思います。

その観点からは金融機関系に依頼する際には、
あなたの会社の売却案件が、
取引先(融資先等)への自社主力商品(融資等)営業ツールになってしまうリスクがないか、
本当に自分の利益を最優先してくれるか、
を自らの責任で判断できるようにしておくべきです。

その点、独立系であれば、そもそも他に売る商品がないので、
そのような懸念を抱く必要がなく、
クライアントである売り手の利益(売却額最大化)と
自分の利益(成功報酬額の最大化)で利害が完全一致し、
同じ舟に乗る(In the same boat)ことができます(ただし独立系FAのみ)。
そのため、独立系M&Aアドバイザリー会社は、
独立系のメリットを謳っている会社も多いのです。

ただし、独立系と自ら謳っていても、実態が異なるケースはあるので、
注意してください。

例えば、売り手の紹介ルートが特定の金融機関に偏っている、
紹介元がアドバイザーの出身金融機関に偏っている、
紹介元の金融機関に少しずつ株式を持たせている、
といったケースでは、
紹介元のメリットを優先させ、
クライアントである売り手の利益をないがしろにする可能性を完全には否定できません。

結局、売り手オーナーは、
自分の会社がどのような条件で売却可能かについて自分なりのモノサシを持ったうえで、
アイミツ業者ごとに売却可能額とその根拠を説明させ、
十分に納得してからアドバイザーをアサインすることが重要なのです。

<M&Aアドバイザーのタイプ別支援内容>

6-4. アドバイザーの選び方

中堅・中小企業(特に中小企業)の場合、多くのケースで、M&A仲介か独立系FAしか選択肢がないのが現実です。

例えば、付き合いのある金融機関が相談に乗ってくれる場合、
太いパイプがあるため取引先への提案がスムーズになりやすい点がある一方、
通常数十億円以上の規模の案件を扱うため、
担当者の質に問題(若手の訓練用案件)がないことと
候補企業がその金融機関の取引先に過度に偏っていないかを確認することをお勧めします。

前述のM&Aの準備の大半を自分でできる(相手探しさえしてくれれば、判断や交渉は自分でできる)方や、M&Aによる買収合戦が過熱しており誰がアドバイザーを担当しても好条件が出てくる業種、純資産が厚く直近3年の営業利益が真の実力を示し成長・シナジーの見込みも薄い会社の場合、手練れのM&Aバンカーが担当しても結果は大きくは変わりません。

その場合には、着手金無料のM&A仲介を起用してコストを軽減、
取扱件数の多い大手M&A仲介を起用してスピード重視がオススメになります。

ただし、専門的なサービスをM&Aのプロ(M&Aバンカー)に依頼して好条件にトライしたいオーナーは、
独立系FAから選ぶ方が成功・大成功の可能性を高めます。

よく相談されるのが、
アドバイザーを1社に絞った方がいいか、複数社に競わせた方がいいかについてです。
とにかく短期間でできるだけ多くの買い手候補に当たってほしいという方は、
複数社を雇って同時に競わせるべきとも考えられます。
ただし、情報漏えいリスクが気になる方にはオススメできませんし、
上手に情報をコントロールしないと「出回り案件」扱いされるリスクもあります。

また、アドバイザーもビジネスですから1社専属契約にした方が真剣に対応してくれます。
しっかりとしたM&Aバンカーに依頼したい場合には、
専属契約でないと依頼を受けてくれないケースも多くなります。

(買い手からも報酬をもらう)M&A仲介とは異なり、
(買い手からは報酬をもらわない)売り手FAのメリットの1つに、
蓄積したネットワーク上にいる(買い手から報酬をもらう)買い手FAを通じた
多数の買い手候補への間接的なアクセスも可能になる点がありますので、
専属契約にしても複数社に競わせた場合と似たような効果を出すことが可能です。
情報統制もバラバラの複数社に競わせるよりは安心でしょう。

不安であれば「ネームクリア(売り手のGoサイン)」の後で買い手候補に提案するようにアドバイザーに指示をするとよいでしょう。

アドバイザーの欲望のために、
売り手企業の苦労の結晶が破壊されることはあってはならないことですから、
事前に定めたルールを守らなかったことを理由に情報漏えいした場合には
契約解除、損害賠償といった保険的な仕組み(アドバイザーとの契約書に盛り込みます)
も大事です。

また、依頼したい業務の内容について、担当者が経験や専門知識を持っているかを必ずチェックしましょう。
M&Aアドバイザリー業務は守備範囲が極めて広大で、
M&Aの業歴が長くても得意・不得意分野は必ずあるものです。

経験や実績は能力を端的に証明する事実ですから、
過去3年間で何件成功させたかについても確認しましょう。
過去3年で3件以上を成功・大成功させているFAなら理想的です。

成立案件数が少なすぎるのも問題ですが、
成立案件数が多すぎる(年間3件以上)アドバイザーは
会社を高く売りたいオーナーにとっては不利となりやすい点は要注意です。

通常、本格的なFAサービス(業務範囲(A)+(B))を提供するためには、
1件につき、最低でも500から1,000時間を投入します。
(買い手を説得して目的を達成するための膨大な資料準備、成長ストーリー作りや
数十回ものミーティングのために、弊社では3,000時間以上投入するケースもあります)。
効率重視にならざるを得ない場合であったとしても、
1/2カットしたらクオリティは壊滅的で期待成果も大幅ダウンとなってしまいます。

数が多いということは、それだけ1件に投入する時間が少ないことを意味します。
単に成立さえすればよいというものではありません(≒失敗)から、
売り手アドバイザーの本分ともいうべき「価値創造のための努力」を避ける
省力的・安値誘導・回転率勝負のアドバイザーではないことを確認しましょう。

外資系投資銀行等で、巨大企業M&Aを中心とした経験を積んだ後
独立したタイプの独立系FAの場合、
中堅・中小企業のM&Aに関する経験と実績があることを確認すべきです。

全てが揃っている巨大企業から膨大な資料を受領し、
短期間で正確にかつ美しい資料にまとめてプレゼンテーションする能力と
中堅・中小企業で時に力技も駆使しながら、ないならば、ないなりに、
結果を出すための方法を編み出して実行しきる能力は本質的に異なります。

士業(公認会計士や税理士)は、細かい点をチェックするプロであるため、
どちらかというと買い手アドバイザー向きで、
売り手アドバイザーとしては経験・能力不足の可能性が高いため
士業だから安心といった思い込みに囚われず、
担当者の能力を冷静に確認してください。

売り手アドバイザーはクリエイティブに価値を創り上げることが最重要ミッションです。
一方、(M&Aバンカー経験のない)士業は節税効果が重要と謳うことが多いようです。
税引き後の手取りが80から90へ増加するのはうれしいでしょうが
100を150や200に増やした上での節税対策と比較すると些末と言えます。

ややこしいのですが、
売り手がM&A初心者であることを利用して
「片手報酬(売り手)しかもらわないからFAです。M&A仲介ではありません。」
という自称FAもいます。

しかし、専門的かつ重厚な支援を提供し、
クライアントの成果にコミットしてはじめてFAです。

単に買い手からは報酬をもらえない個別事情があるだけで、
実態はM&A仲介と同程度の支援内容しか提供できないアドバイザーである
可能性もありますので、
ご自身の責任で、必要とする支援内容が含まれるか、
それを実行する専門能力を持っているか確認することをお勧めします。

アドバイザーに支払う報酬については、
まず気になるのが着手金であると思います。

  • うまくいくか不明なのに1円も支払いたくない
  • 売却するのに自信がないから完全成功報酬にできないのだろう

と思われる方が普通ではないでしょうか。

一方でアドバイザーとしては、

  • 売却を止める権利が売り手に残っているのに着手金無料では膨大な時間を投じにくい
  • 時間とコストを投じて構築した専門ノウハウやネットワークを無料では提供しにくい
  • 着手金無料だと売り手の覚悟が決まらず、必要な協力が得られなければ成功は見込めない

といった事情もあり、
優秀なアドバイザーほど着手金なしではサービス提供が難しくなります。

(日本独特のスタイル(希薄なサービス内容で安値高速マッチング)というビジネスモデルが定着したのは、このような環境にアドバイザーが適応した結果であると想像しています。)

良心的なアドバイザーであれば、

  • 一括ではなく月額の報酬体系
  • 当初お試し期間は割引適用
  • 当初は少額とし蓋然性が高まった段階で適切な報酬額

といった売り手にとって受入れやすい料金体系も検討してくれるはずです。

依頼内容に見合った必要コストを支払う方が優秀なアドバイザーを起用しやすく、
失敗リスクが減り、大成功の可能性が増えると思いますから、
ご自身の目的や状況を総合的に勘案した上で、合理的に判断されることをお勧めします。

どのようなアドバイザーが自分に適しているかをお悩み中の方は
コチラまで。

事前準備の支援(企業価値向上コンサルティング)を提供可能な独立系FA
セルサイド特化型(売り手専門)の独立系FAをお探しの方は
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